THP-top.jpg
THPページ内検索
連絡先 リンク 交通案内   
HOMETHPコース紹介THPコース講義シンポジウムライフトピア連携研究会関連研究会研究プロジェクト
THPコースの学びとTHPとしての役割・課題
 看護学専攻 M2

 訪問看護に携わるようになり、6年が経過した私にとって、THPは非常に興味のある資格であった。実際に講義や演習を通して、多くのことを学んだ。まず、訪問看護をはじめ、様々なサービス提供は、国策を基に、自治体がそれぞれの地域の特徴に合わせて行われていることがわかった。福祉給付金制度などは、国策で不足している部分を補うものであり、まさに愛知県の状況に合わせて、自宅で過ごす住民がよりよく過ごせるように作られている制度である。まずは、国が行う施策をもとに、地域で行われている施策を知り、利用可能な制度を知ることが大切であるとわかった。保健所や病院などの機能を知ることで、患者とサービス事業者、そして保健所をはじめとする医療機関とのパイプ役としての機能を持ち合わせることも、THPとして大切であると思った。個々のニーズに合わせるためには、その対象者が使用できるサービスのみでなく、国策全体を見渡し、その対象者の位置を知ったうえで、THPとして動くことが必要ではないかと考えた。マクロ的な視点から対象者を見ることで、様々な情報を集めることができ、調整が可能となるからである。実際に、演習では、職種間の考え方が大きく違うことがわかり、お互いが意見調整をしつつ協力しなければ方針の統一ができず、対象者の支援が困難であることが理解できた。そして次に必要なのが、いかに地域を巻き込んで対象者を支援していくか、である。講義を通して、直接的には使用していなくても、その制度の対象者としてすでに制度利用者となっている場合も考えられる。また、地域住民が取り組んでいるインフォーマルなサービスもある。対象者の状態によっては、公的サービスのみでは補えず、近隣住民の協力を得ることが必要な場合もある。自分自身、ケアマネジャーとして様々なサービス利用に取り組んできたが、講義を通して学んだのは、対象者が使用できる公的サービスのみでなく、国策まで知っておくことで、地域を巻き込んだサービス提供が可能になる状況を作ることができ、地域でお互いを助け合うしくみにまで発展させることが可能である、ということがわかってきた。中心は、あくまでも対象となる患者であるが、その対象者にサービスが届くまでには、多くの研究と実践が積み重ねられてきたはずである。また、家族をはじめとする対象者周辺の人々も、多くの努力をしてきたはずである。すべて、対象者の健康状態、ライフサイクルに合わせて対象者自身や家族や関係者、サービス提供者は対応してきたはずである。THPにとって、どのような状況をもとに施策が実施されているのかを知っておくことが大切であり、かつ、今後の動向を知るうえにおいても、どのような研究がなされ、制度に反映されようとしているのかを知っておくことがとても重要であると考えた。実際に介護保険制度をはじめ、診療報酬など、様々な医療に関する制度の見直しが定期的に実施されている。場合によってはインフォーマルなサービスの利用を検討しなければならない状況も起こりうる。コース全体を通して、THPには、現在実施されている施策のほかに、今後実施されるかもしれない施策についても知っておく必要があることを学んだ。

 学びを通して、THPの役割も自分の中では少しは明確になったと思う。役割の一つは、やはり情報提供と考える。その情報を、対象者の状態に合わせ、どのように適切に利用することが良いかを、その対象者や関わる人々と共に検討し、サービス提供できる状況を作り上げることが役割の一つであると考える。そして、THPのもう一つの役割は、調整役であると考える。演習でわかったように、職種によって意見の違いがある。また、自分の経験においても、同じ看護師であるにもかかわらず、病棟看護師と訪問看護師では意見が違っていることがある。このように、対象者に直接関わる人々の間でも意見の違いがあるが、病院や開業医でも意見の違いがみられることも考えられる。意見の違いは、人のみでなく、保健所や病院など、施設の立場上での違いもあることは、十分予想される。違いを修正するのではなく、違いを生かしてか活用することが大切だと考える。だからこそ、個々の職種や施設の機能、そして地域の果たす役割を知り、個々のサービスの意見調整のみでなく、地域全体の調整を行う役割もあると考えた。このようなことから、THPは、単に在宅の現場に存在するのみでなく、病院も含めたあらゆる医療現場に存在することが望ましいと考える。様々な医療現場で、様々な角度から現状を客観的に眺め、対象者を中心に、どのように調整することが良いのか、常に検討し、助言できる立場にいることが大切であると考える。

 THPコースの目的から考えると、THPは、直接対象者に関わることはないかもしれないことも考えなければならない。離れた位置から対象者を支援することは非常に難しい。だからこそ、全体から対象者を客観的に見ることが必要であり、かつ、情報を引き出すためのコミュニケーション技術を高める必要があると考える。ただ単に、患者の思いやサービス提供者の困難な状況を聞きだすためのコミュニケーションではなく、THPからの助言を欲している人自身が、客観的に自分をみつめることができるようなコミュニケーション技術が必要であると考える。THPがそのようなコミュニケーション技術を駆使することで、サービスの対象者が自分と周辺との関係を見直すきっかけになることもあれば、サービス提供者自身が自分たちの提供しているサービスの適正を客観的に評価するきっかけにもなると考える。THPには、対象者とその関係者が自分たちのことを客観視できるように支援することも役割の一つではないかと考える。

 THPの課題として考えるのは、その職種がまだ明確化されていないことである。THPコース、とくに演習を通して思ったのは、ケアマネジャーとの違いをどのように明確化できるかで迷った部分がある。ケアマネジャーも情報を収集し、サービスの調整を行うことを役割としている。THPとしてサービス担当者会議などに参加した場合、いかにケアマネジャーとの違いを自分の中で考え、単にサービス全体を見るのではなく、対象者の位置を確認しつつ、ライフサイクルや地域という大きな視点から関わるよう、心がけていく必要がある。また、どのように研究することがTHPの役割を明確化し、その業務を認知させ、強化していくことができるのだろうか、を考えていくことも課題の一つであると考える。現状において、THPは、自分の職種と兼務しつつ実践していく状況であるといえる。自分の専門職に専念しつつ、THPという一段高い視点に立ち、サービスや対象者の関わる人々、地域全てを含め、いかにその対象者を支援するかを考え、実践し、THPという役割を周囲の人々に周知させていく段階にあるのではないかと考える。自分がTHPとしての視点を持ちつつ関わることで、研究方法が見つけられるかもしれないし、役割を明確にできるかもしれないと考える。それには、THPコースを設置した大学にいつでも関わることができ、THPという認識を維持できる状況を確保することが大切であると考える。また、各地で行われる研究や学会に参加するのみでなく、THPを意識できるような研究会に参加することが重要であると考える。THPはまだスタートしたばかりである。これから作り上げていくものである。自分自身、今後、どのように行動することがTHPとしての役割を果たすことであり、周囲への認識を高めることにつながるのか、考えていくことが重要であると考える。

 最後に、このコースを選択したことにより、自分の行動をみつめなおすことができた。実際に関わっていると、その状況に巻き込まれてしまうことが多くあり、客観的になれないこともある。しかし、客観的になりすぎて、利用者から批判をされることもある。自分の経験から、おそらく、THPに対するイメージはできているように思うが、それを固定させてしまうのは、自分のTHPとしての役割を狭めてしまうことになってしまう。だが、完全な第三者で様々な立場の人々に助言できる役割を担う職種は、様々な背景を持つ対象者が増加し、サービスが複雑化していく中においては、必ず必要になっていくと考える。そんな機会に接することができ、自分は本当に恵まれたと思う。せっかく学んだTHPという役割を、担っていくことができるよう、知識や技術を深めていきたい。

名古屋大学大学院医学系研究科  トータルヘルスプランナー(THP)養成コース
〒461-8673 名古屋市東区大幸南1-1-20