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THPコースの学びとTHPとしての役割・課題
 リハビリテーション療法学専攻 M2

1.THPコースの学び
 はじめに,THPコースで学んだことを振り返る前に,なぜTHPを受講するに至ったのか,どのような視点・背景からTHPを受講したのかを振り返らせていただこうと思います。 私は,学部時代,他大学にてリハビリテーション(以下,リハ)の一分野である理学療法を学びました。そこでは主に臨床現場に特化した講義が展開され,臨地実習は一般病棟の他,在宅リハ,小児施設,養護学校,等,様々な領域を経験しました。一方で,リハの現場で行われている治療行為はその多くが,治療者の経験に依存した科学的根拠の乏しい内容でした。この点で,私は基礎研究の重要性を感じ,本大学大学院を志望するに至りました。また,リハに関連する様々な大学院の中でも,基礎研究,臨床研究の両方面に深いネットワークを有し,リハ関連職種にとって良質な教育を受けられると考えました。
 私は臨床医療の教育を受けてきたという背景を持つため,この考え方が全てではありませんが,動物を利用して基礎研究をするからには,それは社会や臨床現場からのニーズに答えるものでなければならない。という信条を持っています。よって,臨床現場の生の声,実情には常にアンテナを立て,それに対する問題意識は持っていなければならないと感じていました。よって,本コースは臨床現場の最新の情報や考え方を知ることができ,さらに臨床研究における基礎的素養も身につけられ,さらに,これからの社会において職種を問わず必須の能力となるリーダーシップ論も学ぶことができ,臨床的素養の乏しい自分には最適なコースだと思い,受講に至りました。
 本コースの過程を一通り経験してみて,やはり受講・修了して良かったと感じています。どのような点が有益だったのか具体的に振り返ってみたいと思います。
 THPの初期時に「THP概論」が開講されました。この内容は,主に保健事業の現況と疫学研究法についてでした。前者により,THPが対象としているものの実体についておぼろげながらに接することができました。また,後者は保健事業を研究するには欠かすことの出来ない「疫学研究法」や「臨床研究論文の読み方」について本格的に学ぶことができました。これらはTHPに必要な能力であることはもちろんですが,私が大学院のテーマとしている基礎研究を客観的に捉える絶好の機会となりました。基礎研究は臨床・保健分野からかけ離れたところに位置しているように捉えがちで,なかなかその繋がりが見逃されがちです。しかし,臨床現場,保健領域に対する研究への理解・素養を身に着けることで,基礎研究がより有意義なものになると感じています。特に,私の研究観を構築する上で,本講義は非常に有益だったと振り返ります。 今年に入り,「THP演習」が開講されました。本講義はTHPの集大成と呼ぶにふさわしい内容だったと振り返ります。それまでの座学という講師から学生への一方向の流れから,学生から新しい医療を提案する流れに転換することで,我々学生はTHPとしての自覚が芽生えたと思います。具体的には,職種間のコミュニケーションの困難さ,それを解決した後の強さを実感することができたことは大変な収穫であったと思います。
 この講義では,それまで座学で学んできた知識を,アウトプットする恰好の場となりました。また,医療現場におけるコミュニケーション,治療戦略といった内容を専門に研究している先生方より治療戦略・態度について,他領域の意見を聞くことができました。本講義を修了して,医療現場では,エビデンスだけでなく患者との対話が重要なのだと感じました。多職種間模擬カンファレンスにおいては,互いの共通言語を持つ努力を行い,共通理解を有し,その上でディスカッションを行うことが必要だと強く感じさせられました。そして,リーダーシップ論の重要性を改めて感じました。さらに,科学的根拠の重要性ばかりに視点が移っていた自分に,文学的・精神論的素養の必要性を感じました。
 他,「THP特論」「THPセミナー」にて,臨床研究を中心に,各専門領域に携わる諸先生方の講演を受けることが出来ました。その内容は最新のものばかりで,保健事業のみならず,研究とは何なのか,現在の流行,ニーズ,そして医療従事者としての心構えについて学ぶことが出来たような気がします。
以上より,私としては,本コースを通じて,「臨床現場の最新トピック」「医療者として最低限持っておかなければならない素養」「リーダーシップ論」「他領域の現状を知ることによる視野の拡大」といった素養を身に着けることができたと自負しています。これらの素養は,今すぐに実現しないとしても,将来,保健事業,医療現場を盛り上げていくための一助になると確信しております。

2.THPとしての役割・課題
 自らの専門知識を活かし健康な地域づくりを支援するために取り組むべきTHPの役割としては,「他職種同士を円滑に統括しリーダーシップを発揮すること」,「行政をつかさどる政治に対し働きかけを行うことで医療行為の質を高めること」,「THPの後継者を育成すること」を考えます。
 1つ目に挙げた役割は,チームリハが広くうたわれるようになった臨床現場において,必須の使命であると考えます。これまでこの責任を担っていたのは医師でした。医師は,高い知識・技術を有しているとはいえ,一領域だけで医療現場にかかわる領域全てを網羅することは不可能です。よって,あらゆる領域を統括する立場の職種が必要となり,これをTHPが担うべきだと考えます。ここで重要となるのは,チーム統括におけるTHPの資格専門性です。医師は医療的専門処置により患者の疾病状態を改善することが出来ます。その専門領域は極めて特別であり,専門性を兼ねそろえています。しかし,チーム全体を見渡し,アプローチするためには,チームの統括を専門的に学んだTHPが大きな力を発揮すると思いますし,そのような人材育成を本コースは目指すべきだと考えます。
 2つ目の役割は,医療・保健事業を根本より支える医療費を,医療現場にもっと有利な方向で活用するためには,国政に対してアプローチを行うことが必須になります。しかし,それには医療行為・保健事業の目的が明確である必要があります。それには,必然的に多様な医療現状を研究する必要があり,ここにTHPが大きく貢献すると考えられます。これにより,THPから政治に提言をすることが可能になってくるのではないかと思います。
 最後に,THPを持つ者は,それを後継者や多くの医療従事者に自身の理念を継承する義務を持っています。しかるに,THPは大学や専門学校等の教育機関や,市民対象のセミナーを,積極的に行う義務を有すると考えます。

 以上,THPはこれからの医療の中核を担うリーダー的存在にならなければならないと考えます。


名古屋大学大学院医学系研究科  トータルヘルスプランナー(THP)養成コース
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